リンリン こうちゃん
その1
作・佐竹弘子 編集・Lee
こうちゃんはダウン症の男の子。これは、自転車に乗るのがすきな、明るく元気なこうちゃんのお話です。
おもな登場人物
主人公・次男の皓平くん(こうちゃん) | 長男の陽介くん (よーすけくん) |
ママ | こうちゃんのおばあちゃん |
「Leeの特別支援教育」
我が家の次男 皓平は8歳、養護学校小学部2年生です。
皓平の皓という字は「月や電気がこうこうと照らす、光がまっすぐ進む様」という意味があります。
今のところは名前の通りに明るくまっすぐに育ちつつあるようです。
皓平の趣味というよりは特技の域でしょうか、補助付き自転車のりの達人です。
距離は15キロくらいはへっちゃら。つきあいの父のほうが根をあげているほどです。
わが地域は昔ながらの農村地区で、200軒中160軒が佐竹という名字です。
当然ながら名字ではなく屋号で呼び合う地区で、「北山(我が家の屋号)の次男だ!」と皓平を知らない人はいないほどです。
その皓平が最近、一人で黙って自転車で出かけてしまうのです。自分では「リンリン、さんぽ(サイクリング)」と言っていますが・・・。
ある日、自宅周辺をさがしていると、自転車のカゴ一杯にお菓子やみかんを入れたビニールの袋を入れて、うれしそうに「ただいま〜!」と帰ってきます。
「誰にもらったの?」
「あっちのおばちゃん!」「・・・」
さて、あっちの誰でしょうか???心当たりの家を聞いても違います。かいもく見当がつきません。
実は、以前おばあちゃんとお使いに行き、お菓子をもらった家に行ったらしいのです。
しかし、あいにく留守でした。しかたなく帰ろうとしたところ、その家の前の家の、無口で知られたおじいちゃんが、「どうしたんだ。」と声をかけてくれたそう。
皓平は”声をかけてくれた人=友達”ですから、いきなり臆せず「お茶飲もう!」と言った。
そしてそこのおじいちゃん、おばあちゃん、皓平の3人でお茶を飲み、話に花が咲いたそうです。
おじいちゃん「こうちゃんは、何才だ?」
皓平「(指でジェスチャーをしながら)7さい!」
おじいちゃん「そうか、こうちゃんは7才か。じゃ、おじいちゃんと同じだ。(指でジェスチャーをしながら)おじいちゃんも70だ」
皓平(ジャスチャーが同じ7だったので)「おんなじ。おじちゃん、おんなじ!」とおじいちゃんを7才にしてしまった皓平。
帰りに「じゃ、お菓子やっぺ。もって帰れ」と言われるとすかさず「(お兄ちゃんの)よーすけも!」
「あ、そうか、じゃ、陽介の分ももって帰れ」ということでたくさんのお土産をいただいて帰ってきたのが真相のようです。
具体的な話は、そのおばあちゃんから、我が家のおばあちゃんが聞いてきました。
「おじいちゃんが、『皓平は癒しになる』って言って、明日は日曜だから来るかな?と楽しみにしている。だからまた来させろ。行っちゃだめって言っちゃだめだど」と温かい言葉を・・・。
味をしめて?その後またこっそりお邪魔し、またお土産を頂いてきたことはいうまでもありません。
細かいことを言えば、人様の家に親に黙って行きお菓子をもらってくることはいけないことかもしれません。
しかし、ニ語分程度しか言葉を話せない皓平が、よその家に遊びに行き友達になり、人を楽ますことができるということを、私は高く評価しています。
だんだんと大きくなれば、一般常識を少しずつ理解し、人様の家に行き「お茶飲もう!」なんて言わなくなるのでは・・・、と期待しています。もっと違う形でのコミュニケーションができるのではないでしょうか。
後日、私が留守の時、バス通りを渡り、親戚の家に行きベルを押し、「お茶飲もう!」と言ったと聞いた時には、その行動範囲の広さにびっくりし、「事故に遭わなくて良かった!」と胸をなでおろしました。
くれぐれも交通安全だけは気をつけて、少しずつ自分で考え行動できる子になって欲しいと思っています。
このエッセイの著者について
このエッセイは、佐竹さん(仮名)の文章を、Leeが編集しました。
皓平君はダウン症で、現在養護学校小学部に通っています。生後すぐに全血液交換、17日目に告知。そして4歳で危篤になった麻疹…、といろいろな経過を経て、現在は元気に過ごしています。
お母さんは子育て、仕事をするかたわら、「茨城県ダウン症協会」の協会誌の編集や、養護学校設置運動などに活躍中です。
サイトでダウン症の人について知ろう! 「ダウン症や障害児のことを知って欲しいな」BADKID'S HomePageより
ダウン症は、「ダウン症候群」とも言われます。1866年に、イギリスのラングドン・ダウンという人が発見したので、「ダウン症」という名前が付いています。「ダウン症」は、染色体の異常が原因で生まれてきます。染色体というと、遺伝に関係がありそうですが、大部分の「ダウン症」は、突然変異によって生まれてきます。「ダウン症」の子どもは、だいたい700〜800回のお産に1人の確率で生まれてきます。 日本では、毎年1500人くらいのダウン症の子供が生まれていることになります。この割合は、全世界のどの地域においても、また時代が移り変わっても余り変化がないと言われています。
2002年2月10日