リンリン こうちゃん
その13
作・佐竹弘子 編集・Lee
今回は兄弟&スポーツ特集です。こうちゃんの自転車、お兄ちゃんの幅跳びとサッカー、そして兄弟の気持ち・・・。
おもな登場人物
主人公・次男の皓平くん (こうちゃん) |
長男の陽介くん (よーすけくん) |
ママ | パパ | おばあちゃん | おじいちゃん |
いつのまに・・・ 先日、学童クラブの指導員さんと食事会をした。すると「こうちゃん、自転車上手になったよね。スイスイだもんね。やっぱり、気持ちの問題だったんだよね」と。 「え?自転車って補助なしに乗れるの?」 「乗れるよ。知らなかったの?この間、公園に行った時に、遊びに来ていた女の子に補助なし自転車を借りたのね。その女の子の自転車でスイスイ乗っていたよ。本当は乗れるんだけど、勇気がなかったんだよね。ふっきれたらスイスイだよ・・・。後ろから支えなくても大丈夫だよ」
「え?」 今まで補助付き自転車の達人の皓平だったのに、補助なし自転車に乗れるようになっていたとは・・・。親は補助をとるための努力もまったくしていないのに・・・。多くの人の力を借りて、成長するなんてすごいね。感謝だね。 さて、週末にはおじいちゃんに頼んで、補助を取ってもらわなくては・・・。おじいちゃんもさぞや喜ぶことだろう。 お兄ちゃん思い 春休みに学童クラブの遠足で水族館に行った。その日だけは買い物の練習も兼ねて500円のお小遣いを持って行くことになっていた。皓平は買い物が大好きだからどんなお土産を買ってくるのか楽しみにしていた。 みんなはそれぞれ自分の好きなおもちゃや食べ物を買ったそうだ。 しかし、皓平は迷わず「ようすけの!」と言い、陽介のためにクッキーを選んだ。皓平は甘いものはほとんど食べないので、陽介のために買ってきてくれたのだ。 その夜、「こうへい、ありがとう!」と言い、みんなでお土産のクッキーを食べた。そのおいしかったことといったら・・・。皓平はニコニコと食べずに見ていた。 さて、先日の学童クラブでのおやつの時間。みんなに分けたおやつがあまり、テーブルの真ん中に置いてあった。それは皓平の大好きなせんべい。 いきなり「ようすけの!」と言いポケットに入れてしまう皓平。指導員さんも兄弟思いだと思ってくれたのか、そのまま持たせてくれた。 帰りの車の中で 「これ、ようすけのおやつ」 「あらそう、もらってきたの?じゃ、帰ったら陽介にあげようね」 「うん」 しかし、数分すると何やらごそごそ・・・。 「え?そのおせんべい、陽介にあげるんじゃなかったの?」 「やだもん!」 そしてパクパク食べている。陽介にあげると見せかけて自分で食べちゃうという知能犯?それともお腹がすいたから? 皓平の大好物のせんべいがおやつに出て、「ようすけの!」と言う時には要注意である(笑) 兄弟思いも空腹には勝てないのかなぁ・・・ 負けず嫌いな、見上げた根性の兄弟! 陽介(小5)の通う小学校は、市を東西南北の4つの地区に分けて、5,6年生で陸上競技会を行う。そして地区大会の上位の選手が市の大会に出場することができる。 「おれ、何の練習していると思う?」 「200メートル?お母さんは小学6年生のとき、ハードルの選手だったんだよ」 「おれは、は・ば・と・び!」 「え?体小さいのに・・・」 「でも、今のところ記録が3位だから出場できるかどうかわからないんだ。だけど2番目の記録の6年生と少ししか差がないんだ。だから練習がんばるんだ」 「陽介はまだ5年生で来年もあるから出られなくてもしょうがないよ。でも、練習は一生懸命やってね」 数日後。 「お母さん、おれ、陸上競技会で選手になりそうなんだ」 「そう、よかったね」 「今まで幅跳びの記録が2位だったやっちゃんが、200メートルに出ることになったんだ。だからおれが幅跳びの選手になりそうなんだ」 「本当?よかったね!」 「でも、おれは自分の記録で勝ち取った選手じゃないと嫌なんだ」 「ま、それはそうだけど、ラッキーということでよかったじゃない」 なんと負けず嫌いなんだろう・・・。 翌日、「お母さん、選手に選ばれたよ」とうれしそうに報告してくれた。やっぱり選手になるのはうれしいよね。毎日、暗くなるまで練習がんばっているものね。 先生に、「幅跳びの記録を伸ばすには、腹筋を鍛えなくてはだめだ」と言われ、毎晩、腹筋がんばっていたからね。 さて、陸上競技会。結果は4位だった。市の大会には3位までが出られるそうで、陽介は残念だった。しかし、まだ5年生、来年があるよね。よくがんばったよね。 その日、父母とも互いに仕事が忙しく応援には行けなかった。しかし、おじいちゃんとおばあちゃん、そして85歳のひいおばあちゃんが応援に行ってくれたそうだ。 しかもおじいちゃんは子どもたちが砂をならすのを見かねて、選手が跳んだ後、毎回砂ならしをしてくれたそうだ。 いやはや・・・。ありがたいが、思春期の陽介は恥ずかしかったかもしれない・・・。
一方、弟の皓平も負けず嫌いだ。養護学校のグループ学習でペットボトルを利用してボーリングのピンを作り、ボーリング大会の練習に励んでいた。 皓平は何本も倒したくて線を越えて投げたり、目の前まで行って上からボールを投げたりと反則ばかりで、先生を困らせていたらしい。 ボーリング大会当日。ルールをきちんと守り一生懸命がんばった。そして2位になり、メダルをもらってきた。 「メダルもらったの?よかったね」と言うと、メダルを手に取り「ママ、やって!」と私の首にかけてくれた。 きらきら光る銀色の折り紙とピンクのリボンでできたすてきなメダルだった。2位になったこともうれしいが、それよりルールを守ってプレイできたことがうれしいなぁ・・・ 小さな看護婦さん 陸上競技会当日の朝、「ガチャン!」・・・。7時までに学校に集合しなければいけない陽介が慌てて玄関に飛び降り、勢い余って肘でガラスを割ってしまったのだ。 「何やってるの!」と台所からどなり見に行くと、ガラスが割れていて「ごめん・・・」と陽介が立っていた。「怪我はない?」と見ると手のひらに3箇所小さい傷がある。
「少し手のひらを切ったけど、学校で薬もらうから行くよ」 「じゃ、気をつけてね!」 「ようすけ、ようすけ!」 見ると皓平が消毒薬を持っている。騒ぎを見ていた皓平。急に二階に上がるので何かと思ったら、二階から消毒薬を持ってきてくれたのだ。怪我をするとその消毒薬を塗るのが佐竹家の定番なのだ。 そして陽介と友達を学校まで車で送って行った父と皓平。車の中で陽介の切り傷に消毒薬を塗ってくれたそうだ。その時は、陽介も素直に「ありがとう!」と言ったそうだ。 皓平、よく気がついて優しいね・・・。まるで小さな看護婦さんだね! 子に教えられること 陽介はセリエAに入り「世界の陽介になりたい!」という夢を持って、サッカーの練習をがんばっている。 その陽介が学校の宿題で作文を書いた。国語が苦手な陽介だけれどとてもいい文章なので、ワールドカップでがんばっている日本を応援する意味もこめて紹介します。 サッカーの試合、予選リーグで二勝一引き分けだったが、得失点差で決勝リーグに行けなかったときについて書いた作文です。 「ホイッスルすいぜんに、あいてにせめられてしまい一点を入れられてしまいました。 そのけっか一対一で、とくしってんさで負けました。試合がおわったあと、ぼくはくやしくて声がでませんでした。 でも、コーチが「終わりのホイッスルは次の試合のはじまりなんだ」と言ったので、ぼくはがんばっています。」 これはサッカーだけでなく何にでも通じることだと思います。 たとえ結果が悪くても、新たな気持ちで、また前向きに努力することが大切だと思います。 また、結果だけを安易に求めがちな忙しい親にとって、考えさせられる文章でした。 |
2002年6月9日