特殊教育諸学校高等部学習指導要領解説より
作業学習の指導
[特殊教育諸学校高等部学習指導要領解説ー養護学校 編ー 平成4年 文部省発行より]作業学習では,作業活動を学習活動の中心にすえ,生徒の働く力ないしは生活する力を高めることが意図される。
作業学習の指導は,領域・教科を合わせた指導の形態であるから、単に職業、家庭の内容だけではなく、各教科、道徳、特別活動、及び養護・訓練の様々な内容を統合した形で扱うものである。高等部の場合には、作業学習を教育課程の中核に位置づけて、職業教育の充実を図る必要がある.
作業学習で取り扱われる作業種目は、農業、果樹栽培、園芸、紙工、木工、縫製、織物、金工、窯業、セメント加工、印刷、調理、クリーニング、部品の組み立てや加工など、多種多様である。
作業種の選定に当たっては、次の諸点に配慮する必要がある。
- 生徒にとって、教育的価値の高い作業活動を含んでいること。
- 地域性に立脚したものであること。
- 生徒の実態に応じた段階的な指導ができるものであること。
- 障害の実態が多様な生徒が取り組める作業活動を含んでいること。
- 共同で取り組める作業活動を含んでいること。
- 作業活動に参加する喜びや完成の成就感が味わえること。
- 作業内容が安全で健康的であること。
- 原料・材料が入手しやすく、永続性のあるものであること。
- 作業量や作業の形態、実習期間などに適切な配慮がなされていること。
- 生産から消費への流れが理解されやすいものであること。
- 製品の利用価値が高いものであること。
作業学習は、学校が独自に計画した作業で行われる場合もあるし、会社等の事業所から請け負った作業で進められる場合もある。また、外部から注文を受けて作業が進められる場合もある。外部から拘束されることなく作業ができる前者にも、一定の規格や納期に合わせて作業をしなければならない後者にも、それぞれ一長一短がある。
作業学習を計画するに当たっては、それぞれの特徴を生かすようにすることが大切である。
高等部で指導されている現場実習は、作業学習の一部であり、その発展として位置づけられ、会社等の事業所の協力により実施され、大きな成果をあげてきた。
現場実習では、現実的な条件下で、生徒の職業適性等を明らかにし、職業生活ないしは社会生活への適応性を養うことを意図している。したがって、現場実習にも、領域・教科を合わせた指導としての広範な目標と内容があることに留意する必要がある。
現場実習の実施に当たっては、生徒一人一人の障害の実態に応じ、保護者、事業所及び公共職業安定所等関係機関と密接な連絡を図り、綿密な計画を立てることが大切である。
現場実習の期間は、生徒の心身の障害の状態、地域や学校の実態等により異なるが、2週間から3週間が一般的である。現場実習の回数は、生徒の能力・適性等により、年間2〜4回実施されている。
なお、高等学校における現場実習の時間数は、実習時間数の合計の10分の7を限度とすると定められているが、精神薄弱養護学校高等部の場合は、生徒の能力・適性等に応じて、適切に定めることとなっている.