Leeの特別支援教育
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サトくん   

その4

作・高田あや   編集・Lee

サト君は自閉症の男の子。今回はサト君のお風呂へのこだわりについてお話しします。サトくんとお母さんの攻防はどうなるでしょう?

おもな登場人物
主人公・次男のサトくん  長男のまこっちくん ママ   パパ(せんべいさん)
  入浴の決り文句

 今日は入浴についての儀式(何かを始めるための決まりごと)をひとつ。
 サトは幼稚園の頃からまこっちと一緒にお風呂に入るようになりました。自分で身体を洗うことはお兄ちゃんの真似で覚えました。
 サトは言葉の理解は悪いけど、一度見たら一瞬にして頭に映像を焼き付けるようです。こういう生活習慣は見て覚えることで、案外スムーズに身につけています。

 さて、子どもも大きくなってくると、風呂場も手狭になるし、まこっちの方にも都合があったりで、また私と入るようになりました。でも、考えてみると普通はもうお母さんといっしょはとっくに卒業の年令です。
 中学入学をきっかけに一人で入ることに決めました。

 もう、一人でできるはずですが、今までの習慣を崩すのが大変なサトのこと。入浴の為の儀式が始まりました。
 8時になると始まります。
サトくん「お母さんと一緒にオフロ〜!」
ママ「一人で入りなさい(最初は冷静に)」
サトくん「お兄ちゃんとオフロ〜!」
ママ「一人で入りなさい」
 納得できないサトはまた「お母さんとお風呂、一緒に入ります〜」 だんだんイライラしてきた私はそれでも「一人で入りなさい」と同じ言葉を繰り替えします。
 この時に違うことを言ったら、パニクッちゃって繰り返しが終わらなくなっちゃうので、同じように言うんです。
 それでも、こっちも相当イライラしてますから最後通告をします。
「それなら、入らなくてよろしい!お風呂、お休み!」
 口調が強いので、さすがのサトもひるみます。これはホントに最後の手段。
 すると、突然休みは困るとサトは方針転換。
「サト、お母さんと一緒にお風呂、入りません! お兄ちゃんと一緒にお風呂、入りません! 一人でお風呂に入ります〜!」とお風呂場へ駆け込むのです。

 一件落着?とんでもない!
 裸になってからまた宣言しにやって来ます。「アタマ、臭い〜!」語尾は下がってるけど聞いてるつもりです。「頭、洗いなさい」と私。「サト、頭を洗います!シャンプーちょっとをつけます。リンス、ちょっとをつけます〜!」
 これは思いっきりシャンプーを使うサトに注意してから加わった言葉です。

 これでやっとお風呂に入ってくれます。
 なかでも、「サト、身体をゴシゴシ洗います〜!」とか「サト、肩までつかりや〜!」とか・・最後に「サト、お風呂あがってよし〜!」といって出てきます。

 これを365日、同じようにやっています。ご苦労なことです。

 おまけに一つ。お風呂の石けんです。もったいながりの私が小さくなった石けんを新しいのにくっつけていたら、サトが真似をしました。だんだんエスカレートしてきて、今や石けんの三段重ね。決して鏡餅ではありません。

石けんの三段重ね

  サトに一泡

 サトがお風呂で身体を洗うとき、石けんだとどうしても使いすぎます。1個使ってしまいそうな勢いなので、苦肉の策としてサトはボディシャンプーを使うようにしています。もちろん、石けんよ。
 これだと、一回プッシュで何とか納得してくれます。

 そろそろボディシャンプーがなくなるので、サトがうるさくなってきました。
「パックスナチュロン・ボディシャンプーを買います!」と催促。
 でも、月1回の注文で買ってますから、届くのは少し先なんです。
 もう、しつこくて・・あんまりうるさいので、ちょっと私は考えた。
 石けんシャンプーを上から足したんです。だいたい、どっちも石けん。香料が入っているかどうかの違いだし、大丈夫でしょう。

 案の定、サトは催促しなくなりました。
 してやったり!これで当分静かだわ。それに、石けんシャンプーの方がお徳用、安いんだもの。

 
  給湯代が2万円 

 ビックリでしょう?新記録です。水量にして14m3・・水道水並みです。
 サトがお風呂を洗ってくれるようになってから、ジワジワと増えてきているんです。水筒と箸とたまの弁当箱洗いでも同じです。とにかくザーザーと熱めのお湯を構わず流しつづけます。

 今日は強硬手段に出ました。浴槽は私が洗って湯を貯めて、サトは入るだけでよいようにしました。
 案の定、お風呂の中で怒ってました。それでもザーザー音はずっとしてるので、今度はお湯を止めるように、度々声をかけました。・・・その結果、ものすごく機嫌が悪くなりました。当たり前だわね、ことごとく私に邪魔されたんだから。
 それでも、チーズケーキを出したら機嫌はすこーんとよくなったから、まぁ、よしとしましょう。

 なんでも自分でできて、本当なら誉めなきゃいけないんだけど、とにかくサトは何でもエスカレートする。 それを止めてちょうどいい具合にさせるのは至難の業です。
 「できなかった事ができるようになった」この時が一番嬉しいんです。
 風呂洗いをさせないようにする・・できることをさせないというのはとても辛いことです。でも、いったんエスカレートを止めておかないと・・・。当分、私が風呂洗いしなくっちゃ。実の所、毎月お湯に2万円なんて払っていけません。 (3月7日)

(さて、この後、お母さんは水道代対策として節水シャワーをつけました。これが大成功で、5月には水道代が4割減でした。バンザイ!)


  またサトの仕業か!

 一昨日からサトが「髪にやさしいウィルケアトリートメントリンスの詰め替え用を買います〜!」とうるさいのです。
 ご丁寧でしょ?フルネームで言ってくれる。実は中身はパックスの徳用リンスなんですけどね。
 ボトルにはまだたくさん入ってるし、今日、都市生活で注文してるのが来るし、「ハイハイ、今日来ます」なんて返事してました。それでもしつこいほどに言うんです。

 昨日の夜にまこっちが「リンス、固まっとるで!」と教えてくれました。
 私はただ今リンスがいらない状態(髪はマルセイユ石けん)なので、判明するのに時間が掛かった。開けてビックリ!白い固形物と化していました。
 これはリンスに間違えてシャンプーを入れたため!・・・しっかり金属石けん・石けんかすになっていました。
 容器はウィルケア用のポンプ式を使ってるので、見事に詰まってしまっています。ああ、容器がもったいない!と思ったけれど、ここでセスキが登場!大さじ1杯ほど入れて水を加えてパコパコ押すと・・・見事、ポンプ復活!
 ああ、良かった!セスキさん、ありがとう!石けん愛好家の皆さんは気をつけましょうね。

 しかし、サトにも困ったもんだ。いろいろと先回りしてお手伝いしてくれるのはいいんだけど、トイレのブラシを洗面所で洗って洗面用のタオルで拭いたり、もう、悲鳴が飛び交います。

  汚れ物の洗濯

 ランニングで汗まみれの体操服を洗いたがりません。
 下着は毎日取り替えます。これは当然として、家での私服・・これも毎朝替えようとします。
 夏ならいいんだけど、冬は嵩張るし、そうそう汚れないので(サトはこぼしたり汚したりしません)具合を見て何日か着て欲しいんです。
 それなのに、毎朝「サト、タンス引出しに服を出します〜!」と言って取り替えようとします。
 これはこだわりといっていいものだから、「代えなさい」というと合点がいかない様子。私からの「昨日着たのをまた着なさい」という返事を待っているんです。

 逆に、体操服は私が引っ張り出さないと取り替えてくれません。引っ張り出してもいつのまにか元に戻しています。
 先生の発案で洗濯物を入れる袋を持っていくことになりました。ランニングが終わって汗ばんだものはその袋に入れて持ち帰り、洗濯することになっています。

 でも、昨日は下校しても袋は出さないし、朝になったらそのまま持っていこうとしています。
 まだ、意味が飲み込めてなかったかなぁ?洗濯物を洗濯機に放り込み、別のトレーナーを袋と一緒にリュックに入れてやりました。こうして実演すれば、何回かで身に付くでしょう。
 言葉では言っても言ってもわかってもらえないことが多くって・・・さて、今日帰ったらサトはどうするか?
 すんなり身に付くこと、どうしてもダメなこと、まだまだ見分けがつきにくいです。

サト君が描いた絵

おめん

クッション

 
自閉症の人についての映画

レインマン
RAIN MAN 
(1988年 米)

監督:バリー・レビンソン
ダスティン・ホフマンの名演技で有名な映画

「ベルリン映画祭グランプリを皮切りに、ゴールデン・グローブ賞、アカデミー各賞と主だった賞を総なめにし、日本においてもロングランヒットを記録した話題作。
 まったく異なる人生を歩んできた兄弟の出会いを通して、肉親とは何か、人生とは何かを考えさせる今までになかったまったく新しいホーム・ドラマ。

 若い日に家を飛び出したチャーリーは、自動車販売業を営むが事業はうまくいっていなかった。そんな彼のところに父親の死が伝えられる。チャーリーは父親の遺産目当てに帰郷するのだが、すべての相続は、会ったこともない兄のものとなっていた。自閉症の兄、レイモンドの存在を知ったチャーリーは、何とか遺産を手に入れようと兄を施設から勝手に連れ出してしまう。当初は、金のみが目的だった兄との関係も、二人で旅を続けていくうちに、本来あるべき兄弟愛が生まれていく。」( レインマンより)
レインマン

レインマン
「学校 III」
(1998 日本)

監督:山田洋二
「自閉症の息子を、女手ひとつで育てている紗和子(大竹しのぶ)と元証券会社部長の周吉(小林稔侍)は、共に会社をリストラ退社し、ボイラー技師の資格を取るための、職業訓練学校で出会う。はじめは、プライドが高く周囲になかなか溶け込めなかった周吉だが、紗和子の優しさによって、心を開いていくのだった。学校シリーズ第3作」
(CinemaScape
より)
CinemaScape

Cinema Clip
あなたの隣のレインマンを知っていますか? というサイトもあります。