Leeの特別支援教育
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サトくん           

その6

作・高田あや   編集・Lee

自閉症の男の子、中学部3年生のサト君はO園に職場実習に行きます。さて、どんな仕事をするのでしょうか?そしてその仕事ぶりは・・・?



おもな登場人物
主人公・次男のサトくん  長男のまこっちくん ママ    パパ(せんべいさん)
          
  
 実習初日

 O園という施設へ今日から5日通います。初めてなので今日は私が連れて行きました。

O園の様子

 サトは地下鉄は慣れたものだし、福祉乗車証を使うのでスタスタ先に立って歩きます。
 最寄の駅、上沢に降りて表示板を見て方向確認。西口1を上がります。地上に出たらもうダラダラした上り坂をひたすら登れば良し。10分かかりませんでした。
 サト一人だと5分だわね。

 1年先輩で今年からO園に通っているY君とお父さんと一緒になりました。そのあと一緒に実習するFさんとお母さん。
 Fさんとは去年の実習も同じでした。良い組み合わせなのかな?

 園の前では担任のN先生と施設長さんがお出迎え。園生の元気なお兄さん(おじさんかも)が案内してくれて、ワーワーと登園の慌しさの中、2人は園の中へ。
 母2人はここでお別れです。
 元気にやってほしいね、なんて言いながら帰路に着くのでした。

 今日はビニールのゴミ袋10枚1組をたたんでセットする仕事をするそうです。
 この園のゴミ袋は採算ベースに乗るほどの強力な製品らしく、正確さと早さを要求されるようです。
 どうぞ、ビニールがツルツル滑ってもかんしゃくを起こしませんように!
 
 実習日誌から 

 付き添ってくださっている先生のコメントからうかがえる、サトの様子をお知らせしたいと思います。

《月曜》
 朝、養護学校の5倍はあろうかというグランドで9周走ったそうです。学校のは1周80m。その5倍を9周ということは、3600m・・!!!
 朝からスゴすぎます!

 作業(10枚重ねで折ってあるビニール袋を外袋に入れる)は2回で手順を覚え、そのうち手を止めて辺りを見回す余裕が出て来ました。先生に声を掛けられると慌てて作業に戻ったそうな。

《火曜》
 登園するのに地下鉄の出口で待っていたら、タッタタと足音!一緒に歩いたので50分につきました。一人だと登園が早すぎます。先生に足並みを揃えて歩いたようでした。エライ!

 午後の予告なしの避難訓練もみんなと一緒にできました。

《水曜》
 今日からはリサイクルハンガー磨きとチップのはめ込み作業。チップというのは何でしょう?サイズの印になるものかしら?明日、見てきます。
 職員しかできない作業をニコニコとこなしていたそうです。やっぱり、スゴッ!

 今日だけ園の給食をいただきました。私はお弁当作りがなくてホッ!

 朝のランニングは学校の先輩Y君について行けなかった。Y君はやっぱりすごい!でもサトもがんばってたそうです。

 明日は保護者を交えて反省会があります。その前に見学をさせてもらえます。楽しみ〜!


 実習見学

 
 O園での作業を見学して来ました。
 サトがやったのは「ビニール袋」と「ハンガー」です。


ビニール袋の作業とはビニールのゴミ袋を10枚数え、それをたたんで透明の外袋に入れるという作業です。


ハンガーというのはイトーヨーカ堂で使っているスカートハンガーを拭いて汚れを落とし、挟む部分についているチップを取り替える作業です。
チップとは一番右の画像です。新しいチップを取り付けるのはいとも簡単にやってしまうため、外し作業だけ任されました。サトのいる班でこの作業ができるのは指導員だけだそうです。



最後に、一緒に実習をしている仲間、Fさんです。ティッシュケースを作っています。

 実習日誌から--その2

《木曜》
 今日は初めからドライバーでチップはずしです。調子よくはずしています。この日は午後から見学させてもらいました。こういう仕事は大好きです。終わりのないような単純作業にもニコニコ満面の笑みでこなしていました。
 ところがお昼の自由時間になると、セロハンテープの跡やスイッチが気になってしまいます。テープを剥がしたいし、電気をつけたいし。でも、声掛けだけでやめるそうなので、場所はわきまえているみたいです。

《金曜》
 最後の日は、月に一回あるスポーツデイにあたっていました。行程は地下鉄で学園都市まで行き、そこから総合運動公園を経て名谷まで歩く。地下鉄に乗って帰ってくるというもので、サトにとってはあまりにスローペースだったそうです。
 でも何よりもうれしいのは、ちゃんとみんなと歩調を合わせてにこやかに行動できたことです。せんべえさんといく時とはえらい違いです。サトは長い休憩を嫌がるし、早足です。ここでもみんなに合わせることができるというのが先生と一緒で嬉しいです。

 日陰で何もしないでのんびりもできたそうで、ちょっと楽すぎた最終日でした。

 実習を終えて

 この実習を終えて、反省会で担当の指導員さんから言われたこと。
「卒業後の進路を選ぶのに、この人がどういう将来を送るのかを考えた上で、施設を見て下さい。」「施設は通過地点に過ぎません。」

 全くその通りです。サトが将来自立して生活するために、色々な体験をさせておきたいと思います。どこで生活しても適応がスムーズにできるように、周りの人に援助してもらいやすいように、しっかり身につけなくてはいけませんね。まだまだ若いですから、これからが親の責任の正念場といったところです。

 学校の実習はあと1回だけど、夏休み中に育成会の体験事業があります。これにも行かせようかなと思案中。
 サトはお出かけ大好きですし、どこに行っても楽しく過ごせるのではないかなと思います。

 とにかく、今回の実習でサトが集中力もあるし、時と場所をわきまえることができるというのが確認できました。
 サト、お疲れさん!(楽しかったから疲れてないかな?)
 



実習について

サト君が体験したものは、「職場実習」、「現場実習」、などと言われます。最近は「就業体験」という言葉も出てきました。
[特殊教育諸学校高等部学習指導要領解説ー養護学校編ー 平成4年 文部省発行より]には次のように説明されています。

高等部で指導されている現場実習は、作業学習の一部であり、その発展として位置づけられ、会社等の事業所の協力により実施され、大きな成果をあげてきた。
 現場実習では、現実的な条件下で、生徒の職業適性等を明らかにし、職業生活ないしは社会生活への適応性を養うことを意図している。したがって、現場実習にも、領域・教科を合わせた指導としての広範な目標と内容があることに留意する必要がある。
 現場実習の実施に当たっては、生徒一人一人の障害の実態に応じ、保護者、事業所及び公共職業安定所等関係機関と密接な連絡を図り、綿密な計画を立てることが大切である。
 現場実習の期間は、生徒の心身の障害の状態、地域や学校の実態等により異なるが、2週間から3週間が一般的である。現場実習の回数は、生徒の能力・適性等により、年間2〜4回実施されている。