Leeの特別支援教育
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  サトくん           

その7

作・高田あや   編集・Lee

自閉症の男の子サト君にはいろんなこだわりがあります。でも、こだわりにも少しずつ変化が見られ、成長が感じられるようになりました。そしてサト君も通知票をもらい、夏休みに入りましたよ〜。


おもな登場人物
主人公・次男のサトくん  長男のまこっちくん ママ    パパ(せんべいさん) 
          
  じゃんけん

 サトは長いことじゃんけんができませんでした。
 さすが自閉!というか、こちらが出したものと同じものをワンテンポ遅れて出す、というのがずっと長く続いていました。

 この間、ふと思いついてじゃんけんをしてみました。
「最初はグー」・・ちゃんとグーを出しました。
「じゃんけん・ぽん」・・グーを出しました。私がチョキを出したのでサトの勝ち。

 2回目、「最初はグー」・・やっぱりグーを出しました。ルールがわかっています。
「じゃんけんぽん」・・グー。「あいこでしょ」・・チョキ。「あいこでしょ」・・パー。
 あれ?私はわざと順番に出していったんですが、ずっとあいこ。わかりました。サトも順番に出しているんです。私が一つずらしたら全部私が勝ちました。
 何だ、サトはまだアトランダムに出すことができないんだわ。
 初めビックリ、嬉しい気持ち。次にはちょっとガッカリ。まだまだでした。

 サトはじゃんけんの間、無表情。勝つ楽しさがまだよくわからないようです。
 
  コーヒー入れてね

 さっき、ピアノの練習の前にコーヒーを入れてと頼みました。答えは「ピアノの練習、終わってから〜〜!!」
 ごもっともでございます。

 サトは甘党&辛党で、コーヒーの場合は砂糖をたくさん入れすぎます。
 マグにスプーン山盛り2杯!私はスプーンに1/3でいいんです。私はいつも入れてもらっておきながら、甘すぎるとブーブー文句を言ってます。

 ピアノの練習が終わって、忘れずにコーヒーカップを出して来ました。
 さぁ、インスタントコーヒーの瓶を開ける前から私は「お砂糖ちょっとね!」の連発です。サトのいつもの儀式みたい。
 しばらくPCに没頭していたら、お湯を入れて「お母さんの」と言って脇にコーヒーを置いてくれました。覚悟しながら口とつけるとナント!ちょうどよい味!
 思わずサトに「ちょうどいいわ!美味しいわ!このくらいがピッタリよ!」もう感激の極みです。ちょうどよい甘さのコーヒーは初めてだったんですもの。

 サトも心なしかニンマリ・・ところがそのあとがハッピーエンドじゃなかった。
ちびちび味わいながら飲もうと思っているのに、横から「お母さんのぉ〜、飲む〜〜!」とうるさいこと。自分が飲みたいわけじゃないんですよ。私にグッと飲めってこと。ちょっとほっといてよ!と贅沢な不満が・・。

 サト、アリガトね!(このさじ加減を覚えておいて欲しいです!)

  お湯を入れる儀式

 コーヒーの事を書いたらsnowflakeさんから質問がありました。
 前のお湯の儀式はどうなったの?って。

 そう、儀式について書いたのはいつだっけ?・・11月9日でした。
 そして、2月14日にはその儀式をしなくなったことを書きました。そのあとすぐに戻ってしまって、ぬか喜びだったんですが、それからずっと毎日過ごす中で私の記憶から消えていたんです。

 snowflakeさんに尋ねられて、もう儀式をしなくなっていることに気づきました。あらぁ、いつのまにかコーヒーを入れて飲んでるわ。やっぱり日々進歩していました。確認して、嬉しくって!
 でも、これはサトには伝えずにおこう。「お砂糖適量」の時は私としては珍しくべた誉めをしたんですけど、こっちの方はせっかく自然になくなっているのが意識させて復活しちゃ困るもの。

 子育てってこういう事があるからやりがいがあるのよ。泣きたいこともいっぱいあるけどね。

 昨日、食べごろのメロンがドンと来て、うちだけでは持て余すので、いつもご迷惑をかけている下のお宅に持っていきました。(食べ物で懐柔しようってか??)
「この頃は全く大きな音がしない」とのお墨付き、頂いて来ました。  
 やっぱりね、大枚はたいて買った防音カーペットの威力だわ。アレを敷くまでは足音も気になる、どこにサトがいるかわかるって言ってましたもの。
 でも、一番の理由はサトがドタンバタンのパニックを起こさなくなったこと。時期というものもあるんですけどね、でも、サトが確実に成長しているということです。
 これをかてにまた未知との遭遇に立ち向かうのだわ。

 昨日はせんべさんが子どもみたいにかんしゃく起こして参ったけど、サトによいことがあったから気分は相殺されました。
 でも、誰か、夫教育の良い方法教えてくれないかしら?

  水泳

 サトは水が大好きです。プール、大好き!
 でも、泳げません。顔を水につけられないんです。

 学校のプール授業でも、先生が来ると水につけられると思うんでしょうね、「自分で〜〜!」と先生を拒むそうです。
 もう一つ、体が浮きません。普段からサトは身体に力が入っているのですが、プールでビート板を持ってバタ足する時は力むので、ビート板が沈んで全く前に進まないそうです。

 サトが泳げないのはせんべえさん譲りです。せんべえさんも浮きません。顔を水につけません。
 若い時、海水浴に行っても彼は浮き袋に捕まっています。あまりかっこ悪いので、それをひっぱって沖へ泳ごうとしたらもっとかっこ悪いことになりました。・・「やめてくれぇ」と叫ばれました。

 サトが泳げるようにもっと小さい時から水泳をさせておけばよかったのかもしれません。まこっちはスクールに通ったこともあって、得意です。
 でも、まこっちは一人でスクールに行ってくれたけど、サトの場合、通わせるところがありませんでした。

 障害があるとなかなか受け入れてもらえません。親と一緒だと入れてくれるところもあるのかもしれません。その頃の私は努力が足りなかった。何より、水着姿になるのがイヤだった。
親がサークルを作って水遊びをさせる人たちもいたのに・・・。

 今だったら?・・もっとイヤです。
 今となっては、泳げなきゃ水に近寄らなければいいや、と思ってしまいます。サトにはかわいそうですね。

 今、育成会の成人の余暇活動で、年に一回プール遊びをしています。
 成人になるとよけいに水に触れるという体験が少なくなるそうです。
 市のスポーツセンターは障害者向けに無料開放したりしていますが、利用するのはやはり軽い身体障害の人がほとんどのようです。病後のリハビリによいですものね。
知的の場合はやはり介助者が誰でも良いわけでもなく、なかなか利用しにくいようです。やはり、大人にもサークルが必要でしょうかね?
私には体と頭が一つしかないので、自分で動くのは無理だわ・・・動く人を探すか??探すのにも時間と行動が必要です・・難問だわ。

 終業式のおみやげ

 サトも一学期が終わり、夏休みに突入です。
 今日は終業式で、成長の記録(通知表)をもらって来ました。

 サトの学校のはA5サイズのカード式です。学習別に3学期分記入欄があります。それぞれ課題が違うので、○を記入はしません。担当の先生が手書きで記録してくださっています。↓こんなのです。

成長の記録(通知表)

 中学校の障害児学級でも同じ形式でしたから、終業式にドキドキ待つ、なんてことはありません。こればかりは恵まれています。

 たいてい、少しずつできることが増えています。人と比べてどうこうということがないので成長を素直に喜べます。
普通の学校でもそうすれば子どもや親も気が楽でしょうに・・・あ、でも世の中には相対評価がなくては不安という人もいるみたいですね。競争社会では仕方ないのか??不幸な子ども達です。

 さて、明日から夏休み。
 サトの課題はいつものように「11時に寝る」と「新聞を取りに行く」です。新聞は言われなくっても取りに行くから◎が付くに決まってます。就寝も課題にしてしまうときちんと守ります(これは春休みに実証済みです)
 サトが自分で決めたようですが、考えたものですね。先生もそれに同意してくださって、助かりました。できないことをガンバッテするにはサトはまだまだで、無理やりだと毎日パニックになりかねません。

 この休みはサトとせんべえさんとで買い物に行って、プラモデルを作ることになりました。
 実は学校で、プラモデル作りができるということを先生が見つけてくださったんです。小さい時は全く興味なし。ひたすらジグソーパズルかテレビゲームでした。
 ガンダムロボットを完璧に作れるそうです。せんべえさんは欲張って船を作らせようといってますが、最初はサトの好きなキャラクターものがいいと思うんですよね。父親はすぐ飛躍してしまうので困るな。